今回は漢を建国した劉邦(高祖)を受け継いだ前漢の皇帝たちをみていきます。
劉邦は農民出身ということもあって、春秋戦国時代、秦の時代そして項羽と劉邦の争いの時代で民衆の生活が困窮していることを理解していました。
なので劉邦は国力の回復に努めました。劉邦の意志をついだ皇帝達も国力の回復を第一とし、民衆の支持を獲得し徐々に皇帝の権威は回復していきました。
秦と異なる漢の政治
動画にもある通り、秦の武帝に至るまでの皇帝は民衆のための政治「王道」を貫いていったと伝わっています。
全国の統治の仕方も秦の時とは大きく異なっていました。
秦の時代には「郡県制」と呼ばれる中央集権体制が取られていましたね。漢は国の中心は漢王朝が支配し、地方は諸侯に支配を委ねる封建制を併用する政策を取りました。これを「郡国制」と呼びます。
これはそもそも漢という王朝は全国を支配するほどの影響力を持っていなかったという面もありますが、秦の性急な中央集権体制の二の足を踏まないための政策でもありました。
漢の皇帝達はこうした状況を抱えながらも徐々に諸侯の権力をそいでいきます。
焦った諸侯は「呉楚七国の乱」を起こしてしまいますが、これを鎮圧した漢は再び中央主権体制を確立していきます。
武帝の治世
武帝は中央集権体制を確立しつつも、外征を多く行った皇帝として有名です。
そのことから皇帝の名称に「武」がつけられたほどです。武帝の時代に漢は領土が最大になりました。
武帝の外征
匈奴の討伐を主目的として、中央アジアの進出をしていきます。大月氏への張騫の派遣、敦煌郡を設置し、大苑への進出で汗血馬を得ようとするなど匈奴への圧力を強めていきます。
匈奴へは衛青将軍を派遣するなど、劉邦の時代にも勝てなかった匈奴を撃退することにも成功します。
これらの活動によって絹の道、いわゆるシルク=ロードが開拓されていきました。
また、朝鮮半島の衛氏朝鮮を滅ぼし、楽浪郡を設置したり、また南方では南越を滅ぼして南海郡など9郡をおきました。
しかし、これらの外征によって国家は財政難に陥ってしまいます。
武帝の内政
武帝は財政難を克服するための政策をとっていきました。
前漢の時代では、絹や製鉄・製紙などの産業がとても盛んになっていました。
結論からいうと、武帝はこのような民間の商人から「商売の権利を奪って、政府が儲かる」仕組みを作っていきます。
具体的には、
- 塩・鉄・酒の専売
- 均輸法・平準法による物価調整
などがあります。これらは政府の財政難を改善する政策になりましたが、民間の農民や商人たちの生活は困窮していきました。
豪族の出現
困窮していった農民や商人は没落して、財力の蓄えのある者を頼って逃げ込み始めていきます。
こうして誕生していったのが豪族と呼ばれる人たちです。
豪族は没落した農民らに自身が所有する大土地を管理させ、経営をすることで権力をつけていきました。
さらに豪族は影響力を強めていき、郷挙里選と呼ばれる官僚登用制度によって中央政治にも進出するようになっていきました。
中央政治の腐敗
同じころ中央では、政治の腐敗が進んでいきました。お金を納めさえすれば罪が許されるといった状況が財政難により広まっていってしまったのです。
そんな中影響力を強めていったのが外戚や宦官と呼ばれる人たちです。
外戚とは皇后(皇帝の妃)の親戚のことです。宦官は去勢をしたことで後宮(皇后が住む場所。男性は立ち入りが禁止されていた)に入ることを許された官僚たちのことです。
彼らは皇后を利用し、政治に対する影響力を強めていきました。
このようにして中央政治は混乱してしまい、最終的には外戚の王莽によって滅ぼされてしまうことになります。
儒教の官学化
武帝の時期に董仲舒によって儒教が官学化(官僚が学ぶべき国の学問)されました。
五経博士が設置され、儒教の振興が進んで行きました。
後漢の時代になると訓古学が盛んになり、儒教の教典の整理・注釈が盛んになりました。
しかし、これらの五経博士や訓古学によって儒学は国家にとって都合が良い部分だけを抜き取った学問に改変されていってしまうことになります。
まとめ
武帝は始皇帝以来の中央集権国家体制を確立しましたが、度重なる外征や経済政策によって民衆の生活は困窮してしまいました。それは豪族の出現・治安の悪化をもたらし、前漢が滅ぶ大きな要因となってしまいました。
この経済政策に関して、「国家が経済に介入するべきか?」という議論があります。この武帝時代の経済政策を題材のこのような議論に『塩鉄論』と呼ばれるものがあります。現在の経済を考える上でも参考になると思うので、興味あれば調べてみてください。
チェックリスト
- 秦と漢の統治体制の違いについて説明できるか?
- 武帝の外征について説明できるか?
- 武帝の経済政策が失敗してしまった理由について説明できるか?
- 前漢が滅びた理由を説明できるか?